5人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「あなただったんですね。要君の携帯電話から、あたかも要君ご本人が送ったかのようなメールを送って来たのは・・・」
「そうよ。どんな気分だった?裸の女の写真送られて。自分の彼氏が自分の知らないところで他の女抱いてるって知って。悲しかった?辛かった?可哀想にね」
「勝手な事を言わないで下さい。私は、分かっています。・・・分かって、いるんです。始めから。だから、あなたに何を言われても要君とは変わらないでいられます。終わったりしません。では、失礼します」
何が何だか分からないままに。
それはどこか、始めて見た香織の怒ったような横顔だった。
「ちょっと待ちなさいよっ」何て言葉も振り切って。
いつもは俺が引いていた手が、今日は俺を引いていた。
「・・・っと待って・・・」
どうやら進んでいるのはあの、公園へと続く道。
「・・・香織・・・、かお・・・」
俺が名前を呼べば俺の手をパッと離して走り出してしまった。
「しばし・・・しばし待っては下さいませんか・・・、今は・・・ダメです・・・」
「香織っ!!・・・全力失踪は勘弁してっ!!追い付けないっ!!・・・香織っ」
追い付いてあげたい。
どうしても。
だけど、やっぱり速すぎて。
「・・・走るとか、反則だろ」
追い付けなくて。
何度か曲がり角で見失いそうになったり。
転びそうになったり。
そうして辿り着いた公園で。
「要君、お疲れ様ですっ」
笑っている、君がいた。
泣いては、いなかった。
じゃああれは?
見過ごして、いいの?
どうすれば、良かったのかな。
ごめん、何が正解で。
何が間違いで。
俺は、バカだから。
分からなかった。
ごめん。
ごめんね、香織。
「掴まえた」
ぎゅっと、抱き締めた。
何となく、泣いている。
そんな気がしたのに。
だけど、俺はバカで。ズルいから。
「布団がぶっ飛んだ。ドラム缶の上にあるミカン。新聞紙、トマト、たけやぶやけた」
ありったけの冗談を思い付くままに。こんな事しか思い付かないけど。
最初のコメントを投稿しよう!