この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋 番外編】

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***  飛び出すように歩のいた病室から出て、慌てて扉を閉めた。  足元をフラフラさせながら、傍にある談話室の椅子に座り込んでしまう。 「ショック療法で記憶が戻るかと思ったけど、やっぱり上手くいかないものだな……」  テーブルに顔を突っ伏させた。心底、疲れてしまった――  普段言わないようなことを、ぽんぽん口にしてみたら、歩が驚いた顔をしてる姿を見て、すっごくドキドキしたんだ。俺に翻弄されて、慌てふためくその様子が、またしても可愛らしくて。 「……余計好きになっちゃったじゃないか、どうしてくれるんだ。バカ犬がっ!」  きっと校内にいる時はあんな様子で、ちゃらちゃらしていたんだろうなって、容易に想像ついた。  俺の前ではまんま子供だけど、大人ぶった生意気な口の訊き方をしつつ、好きだぜ。なぁんて囁かれた下級生は、簡単に騙されてしまうだろう。  そんな風に背伸びをして頑張って大人ぶってる姿に、年上の誰かさんも、コロッといっちゃうかもしれない。故にオールマイティ。 「つくづく厄介な男を好きになってしまった。まったくもって面倒くさい……」  歩じゃなく、自分自身が面倒くさい。いつもと違う歩を見たくらいで、ドキドキして気持ちを持て余してる。
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