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「太郎! 大丈夫か?」
「太郎ちゃん、私が分かる!?」
頭を打った後なので頭に刺激を与えるわけにもいかず、故に揺することが出来ない。村上さんと一緒に声をかけながら、頬をぱしぱし叩き、意識をチェックしてみる。
「うぅん……あ……?」
ぼんやりしながら目を開き、俺たちの顔を見てくれた。
「良かったわ。太郎ちゃん、頭は痛くない?」
無事に意識を取り戻した姿に、ほっと胸を撫で下ろしたときだった。
「……アンタたち、誰? 太郎って誰のことだよ」
「え――!?」
「俺には立派な名前があるっていうのに、何でそんな変な名前で呼ぶんだ?」
太郎の言葉に、村上さんと顔を見合わせてしまう。
「お前の名前は何だ?」
「おにーさん、そんなに知りたいの? 俺のこと」
俺が訊ねると何故か、へらっと笑いながら答えてきた。
「……村上さん救急車の手配ヨロシク。頭部のCTとMRIの準備するようにって」
らしくない太郎の様子に異変を感じた俺は、迷うことなく救急車を呼んだ。
村上さんが電話をしている間、頭を振りながら、自力で起き上がった太郎に話しかけてみる。
「俺のことを、お前は覚えていないのか?」
「何、言ってんの。新手のナンパとか?」
「ナンパならお前からされてるよ。残念ながら恋人同士なんだ」
事実を突きつけてやるとビックリした顔をして、穴が開きそうなくらい俺の顔をじっと見た。
「マジかよ……こんなキレイなお医者さんが俺の恋人って。俺のどこが良くて、付き合ってんだ?」
「っ……バカなところと、面倒くさい……とこ」
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