この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋 番外編】

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 忘れられてる自分の存在がショックで思わず、泣きだしそうになってしまう。  口元を押さえ必死に堪えていると、俺の右目尻にそっと手を伸ばしてきた太郎。 「泣くなよ……まるで俺が泣かせたみたいじゃん」  そういえばコイツに、初めて逢ったときも言われたっけ。 『そんな寂しそうな顔して、泣かないで?』  ホント、手のかかる恋人だ――なのに無性に優しくて。その優しさが胸に沁みてしまう。  思わず歩の身体に、ぎゅっと抱きついてしまった。俺のせいで、一部の記憶が失われてしまうなんて……  大事な恋人を守れなかった医者の自分は残念ながら、どうしていいか分からなかった。
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