この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋 番外編】

6/37
前へ
/120ページ
次へ
***  きれーなおにーさんに付き添われ、救急車で大学病院まで連れて行かれた俺。  病院に着くと早速、頭の中の写真を何枚も撮られ疲れきったトコに、母親と妹が心配そうな顔して到着した。  病室に入ってきた親たちを見て、ベッドに横たわる俺の傍にいた、きれーなおにーさんが素早く立ち上がり、きっちりと頭を下げる。 「このたびは息子さんにケガをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」 「頭を上げて下さい、周防先生。息子がいつもお世話になっているというのに。逆に、お礼を言いたかったんですよ」  きれーなおにーさんは、すおー先生というのか。  頭を上げて切なげな瞳をした横顔を、じっと見てしまった。 (――未だに信じられねぇ、こんな人が俺の恋人なんて……) 「周防先生のところに通うようになってから、学校の呼び出しがなくなりましてね。成績のほうも以前に比べると、すごく良くなっているんですよ。きっと先生がうちの息子の面倒を見てくれているんですよね?」 「いえ……それはきっと彼が命に関わる病がきっかけになり、考えることがあったからだと思いますよ。私はただ、ちょっとだけ手を添えて、お手伝いをしているまでです。しかし今回、ケガをさせてしまったのはこちら側のミスですので」  あまりにも自分が悪いと連呼しミスを引っかぶる姿に、胸が痛くなってしまった。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加