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「すおー先生は、ちょっと待て! 話があるから」
「分かったよ。それではここで失礼します」
扉の前でしっかりと頭を下げ、親たちを見送ってから、ベッド脇に置いてある椅子に静かに腰掛ける。
「話って何だ?」
「……あの、俺たちってホントに恋人同士なのかなって。未だに信じられなくて」
きれーな顔を窺いながら言葉にすると、難しそうな表情を浮かべ、顎に手を当てて考えはじめた。
「説明するとなると、ムダに長くなる。正直、面倒くさい……」
(その面倒くさいトコが好きって、言ってたクセに!)
「それでも知りたいんだけど。えっと、俺がアンタをナンパしたんだっけ?」
「そうそう。その後病気で倒れたから、仕方なく面倒を見てやった。一緒に生活している内に、恋人になりました。めでたしめでたし」
説明しながら、手をパチパチと鳴らしてくれるオマケつき。大事なトコが知りたいっていうのに、何なんだ。
「説明省きすぎだろ、ちゃんとしてくれよ」
「事実を知ったら間違いなく、今以上に混乱するけど、それでもいいのか?」
「それを知ったら、上手いこと記憶が戻るかもよ!」
俺が微笑むと逆に、すおー先生はすっげぇイヤそうな表情を浮かべ、眉間に深いシワを寄せる。
「アンタの記憶、戻ってほしくないのかよ?」
「戻ってほしいけど。でも今はあまり、無理してほしくないんだ」
長い睫を伏せ俯く姿に、ますます知りたくなってしまった。この人にこんな顔をさせるなんて、俺ってば罪な男かもしれない。
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