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「俺はどうしても思い出したい。アンタを見てると、知りたくて堪らないんだ」
右目尻のホクロに手を伸ばし、そっと触ると体をビクつかせる。
一瞬だけ俺を見てから、あらぬ方向を見たまま、諦めたように話し出した。触れている頬が熱を持ったのが、指先から伝わってくる――
「病院前で倒れたお前は、自分の正体を知られたくなかったから、名前を教えてくれなかったんだ。それで俺が太郎って名づけた」
「へえぇ、なるほど」
「他にも突然、犬になってな。散歩に連れて行けとワンワン吠えたり、困らせることばかりして、かなり手を焼いていたんだ」
Σ( ̄⊥ ̄lll)・・・い、犬!?
「ほらな、混乱してるだろ。頭が痛くなる内容に、余計ワケが分からなくなるって」
心配そうな顔をして頬に伸ばしていた手を、ぎゅっと握りしめてくれる。
「とにかくもう、これ以上は考えるのは止めろ。バカ犬のお前が、もっとバカになったら困るからな。そろそろ横になれって」
椅子から立ち上がり、俺の身体を押し倒したすおー先生。その腕を掴んで簡単に逆転してやり、ベッドへと強引に押し付けた。
『…っ、やめっ……病室なんてリスキーな場所でそんなこと、出来るワケないだろ』
次の瞬間頭の中に、艶っぽい声が流れる。まるで今の行為が、以前にもあったみたいだ。
白衣姿のすおー先生が、何も言わずじっと俺を見上げた。
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