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「最低!」
とマーヤは部屋の中ににあったモノを蹴飛ばしました。
カンと甲高い音を立ててゴミ箱が転がり、
「ああ、いけない」
とマーヤは散らばったゴミを見て慌てました。
なぜなら、この住居兼事務所には『掃除機』がなかったからです。
掃除機に限らず、サカザキ探偵事務所には〝魔力〟を注いで〝魔法〟を行う〝魔道具〟がありませんでした。それもそのはず、この事務所の主は魔力を一切持っていないのです。
探偵さんは違う世界から無理やり連れて来られた、と訳のわからないことを言っていますが、そんなことお年頃のマーヤには知ったこっちゃありません。
便利な便利な魔道具がない事務所は、ただただ不便でした。
マーヤは仕方なく、自分の家から掃除機を持ってくることにしました。扉を強く蹴っ飛ばすとホウキにまたがってスィーと事務所を後にしました。
余程ムカついていたのでしょう。
蹴られた扉は歪んでしまいましたが、戻ってきた彼女は何故か上機嫌で、緑色の瞳を輝かせていました。
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