第1章

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 秀哉は、動かずにまだ真っ赤な顔をしているアンジェリーナの手を素早く取って触れさせようとした。思わずアンジェリーナは触るまいと指を握ったが、却ってまるごと力一杯掴んでしまった。秀哉がぎゃっと声を上げ腰を引いたとき、皮の先だけ拳に挟まったまま随分と長く引っ張られた。 「女子は早く行きなさい。秀哉、何やってる。」 先生の声を聞くとヴィーカとアンジェリーナは走っていった。プールへ行く途中、ヴィーカは興奮してアンジェリーナにいろいろ質問した。そして、アンジェリーナの手を嗅いでみて、 「ちょっと臭くない?」 と、うるおったような声を弾ませた。  放課後、アンジェリーナはヴィーカとピザ屋のところで別れると、まっすぐ順吉のアパートへ向かった。夏の日は長く、まだ夕方と言えない明るさだった。  ふでばこから鍵を取り出し、アンジェリーナは当たり前のように順吉の部屋に入った。朝出てきた時と変わらず散らかっていた。何日も前のアンジェリーナの靴下や下着も、本と一緒に床に投げたままだった。  順吉は昼寝をしていた。アンジェリーナは冷蔵庫からりんごのジュースを出してきて、寝ている順吉の横にしゃがみ、パックのまま一気に飲んだ。そして少し横になっていたが、むっくり起き上がると順吉のシャツをまくりあげ、パンツを膝まで引き下げた。  髪・ひげ・のどぼとけ・脇の下・へそと、アンジェリーナは両手で男の体をゆっくりと確かめ、ときどき自分のものと比べてみた。今日のことを思い出しながら順吉のを握ってみたが、秀哉のと違って片手に溢れて収まらない。秀哉のには驚いたけれど、見慣れたこれは、自分の体より身近に思われて不思議だった。  アンジェリーナはまたりんごジュースを片手で取ってごくごくと飲み、もう片方の手に持ったままの順吉を口いっぱいに頬張った。順吉はいつでも早かったから、りんご味が美味しく思われた。  アンジェリーナはそのあと宿題をしてから順吉の部屋を出ていった。順吉は結局、終始眠ったままだった。
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