第1章

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 翌々日の三時間目にようやくアンジェリーナは気がついた。消しゴムがない。爽やかに甘い匂いのする買ったばかりの消しゴムだった。虹色に透けた色をしていて、きれいなのでまだ使っていなかった。きのうは図工に体育が続き、なくしたのに気づかなかったのだろう。順吉も友人と用があって遅いというので、きのうは寄らずにアンジェリーナはヴィーカと少し遊んでから家に帰った。おととい順吉のところに忘れてきたのだとアンジェリーナは考えた。  ヴィーカが珍しく休んでいた。先生は何も言っていなかった。  学校が終わると、アンジェリーナは秀哉を連れてヴィーカの家に行くことにした。秀哉はクラス委員長でもあった。それで、義務だと言って無理に連れて行ったのであった。  ベルを鳴らすとヴィーカが寝巻で出てきた。お母さんはピアノを習いに行っていると言い、アンジェリーナと秀哉とは中に入った。ヴィーカは病気でもないようだった。  部屋に入るとヴィーカは涙をこぼし始めた。きのうの夕方、男にいやらしいことをされたと言う。大変なことをされたので不安だが、医者には行きたくないし、親にも恥ずかしくて話していないと言った。そして、ここのところだと下に手を当てた。  いま秀哉に見てもらおうとアンジェリーナは提案した。友達のを見たい気はあったけれども、とても触る気にアンジェリーナはなれなかった。戸惑いながらヴィーカは、この前秀哉のを見たからそれでもいいと言い、秀哉は嫌だと言いつつ、本当は好きな相手を前に、困ってもじもじしていた。  ヴィーカは意外と平気に下着を脱ぐと、椅子の上で膝を立て、脚を広げた。顔は横に向けていた。秀哉が顔を近づけたとき、ヴィーカは場所がわかるように開いてみせた。アンジェリーナは見て何か不潔に感じ、においが届かないよう息を止めた。唾みたいのが出てきてると秀哉がつぶやいたのにアンジェリーナは笑ってしまったが、ヴィーカの本心を当てているようにも思った。  やがて秀哉は、ヴィーカの中からアンジェリーナの消しゴムを取り出した。  このことがあってから、ヴィーカは秀哉と一緒にいることが多くなった。消しゴムは、気持ち悪いので秀哉にあげたら、秀哉が同じ新しいものをアンジェリーナに買ってくれた。消しゴムのことはもうどうでもいいようにも思われたが、やはり真犯人は誰なのかアンジェリーナには気になった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加