第1章

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 卒業式の日、ヴィーカは先生と親しそうに話していた。顔と顔とがくっつきそうなくらい近づいて、ヴィーカはにこにこしていた。  アンジェリーナは二ヶ月前に初潮を迎えた。陽一と順吉と自分との関係は、もう妊娠してしまえば続かなくなるのだと、体から心に突きつけられた思いがした。陽一はこれから自分を愛してくれるかもしれないが、中学に行ったら別れるかもしれない。順吉は、ますます女の体になっていく自分を嫌うかもしれないが、すぐ結婚してくれるかもしれない。  友情とか恋ってなんなのだろうとアンジェリーナは考える。ヴィーカと秀哉、先生、陽一、自分、順吉。  きのうの帰り道、ピザ屋の前で、アンジェリーナはついにヴィーカに聞いてみた。ねえ、変なことした男って、もしかして先生? ヴィーカは、先生はお嫁さんがいなくて大変だし、それだと男の人はとても苦しいんだって、そんなときお酒もたくさん飲むんだって、だからあたしが何とかしてあげなきゃ、と言い、秀哉は子供っぽいし、学校変わっちゃうしねと笑って言った。頭も良いヴィーカは、全国でも名高い私立学校に進学する。  答えになっていないとアンジェリーナは思ったが、順吉と自分との関係も同じようなものだと思った。 「先生だって、もう学校違うんだよ。」 「いやだなあ、だから自然にお付き合いできるんじゃない。」 「あたしたちは友達でいられるよね。」 「それはそうよ。」  アンジェリーナには未来が見えなかった。うすももいろの桜並木が淋しかった。ヴィーカの家族と写真を撮ったとき、何かが終わったように思われた。  筆箱の中の鍵が鳴った。アンジェリーナは、変わらぬ愛情を頼りに順吉の部屋へ走った。順吉は今日もこの時間、昼寝しているに決まっているのだ。
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