迷い人たち

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 誰か離れてしまうのなら、もう一生誰とも付き合わなくていい。  残された僅かな時間は、逆さまにした砂時計のよう。一度流れ始めたそれを、止める術を知らない。  離れたくない、一緒にいたい。ただのわがままだと言われても構わない。それくらい独占したかった……けれど、勿論私だけのものではないから、きちんとした家族と共に私の前から姿を消す。  何度、時間が止まれ、と願ったかわからない。まだ幼いながらの頭で、目の前の現実を拒んでいた。  最初に別れたのは、私だった。けれど、彼女は私のもとに遊びに来てくれた。それなのに、私は遊びに行くことができないから、彼女の前に再び姿を見せることはない。  砂が完全に落ちきった時、この世の全てが嫌になった。笑って「さよなら」 を告げても、心の空白は埋められない。  それほどに、大きい存在であったのに……あれから数年、私はあの人への手紙を送っていない。  最初こそ、寂しさもあって毎日のように手紙を出していた。返ってくる返事を見て安心していた。手紙を書く事をやめたのは、その郵送費が出せない、と言われてからだ。送れない手紙を書き続けて、家の中に溜め込んで。いつの間にか、それすらしなくって、疎遠になった。  別れが辛いなら、別れないで済む方法があるーー悲しいならば、誰にも寄り添わなければいい。誰かが寄り添ってきたならば、冷たく突き放せばいい。そうすれば、悲しい思いを抱かなくてもいい。  それが、私が出した結論。
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