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「…あんた、いつから…」
「は?なに?」
「いや…やめとく、なんか怖いわ」
いつから私のこと好きだったの?って聞こうとしたけど、なんだか恐ろしくて口をつぐんだ。
だって、マサシには高校のときも大学に入ってからも彼女がいたし…。
色々とつじつまが合わなくなってくる。
「なんだよ、夫に秘密事はなしだろ」
「夫とかやめてよ、まだ籍入れてないし」
「でも届けはもう書いたじゃん、あとは明日出しにいくだけ」
だろ?奥さん、なんて。
ニヤリと笑った顔は、やはり職業とおりキラキラと輝いていて長年見てきたけれどドキッとしてしまう。
徐々に体重をかけてくる身体を押し返し間合いをとれば、マサシはニタニタ頬を緩めながら、赤くなって可愛いじゃん、と嬉しそうに笑った。
「もう、思い出に浸ってないで早く荷物詰めてよ、引っ越し明日なんだから」
「はいはい~」
へらへら笑うマサシからアルバムを取り上げてたたみ、周りにあった他のアルバムと一緒に束ねて段ボールへ。
本棚から雑誌やら文庫本やらを取り出して箱に詰めていくと思い出を宝箱へ詰め込んでいっているようで何だかワクワク心が高鳴った。
「あぁ~何入ってるか箱に書いとかないとわかんなくなっちゃうな~」
「え、何当たり前のこと言ってんの?もしかして…」
「今まで何も書いてなかった、」
「ちょっと、何回引っ越ししてんのよ、あんた…」
自分で買ったのか、現場でもらってきたのか段々と増えていく雑誌たちを箱詰めしているマサシの手の中。
雑誌のインタビューで初恋の人について聞かれたマサシが「将来の夢がアイドルだった子」と答えているなんて、私は知る由もなかった。
おわり
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