27人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい。ソーサーにあるシナモンスティックで混ぜてからお召し上がりください」
いただきます、と小さく呟いたお客様は、ゆっくりと混ぜ、両手でボウルを持ち上げました。
「いい匂い」
私達にもその匂いは届いています。
お客様は一口飲み、また一口、と飲まれました。
口を離すと、ボウルを見つめてこう言いました。
「……不思議な、味。甘いのに、辛い」
ほっ、とする味、とお客様は微笑みます。
「全部飲んでいいんですよ。我慢せずに」
私はそう言いました。
白雪さんも頷いています。
「いい恋、しましたね」
「……え?」
「忘れたくない、いい恋をしましたね」
私は、にっこり、と微笑みました。
お客様は頑張り過ぎです。
我慢し過ぎです。
だから、こう言います。
「泣いても、いいんですよ?」
唇を結んでいたお客様の目から、ゆっくりと、恋の涙が落ちました。
これで私達のチョコレートは完成です。
最初のコメントを投稿しよう!