無口なチョコレート屋さん

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お客様は涙を拭わずに、カップに口をつけます。 「……とっても、美味しい。飲みたくて我慢出来ないわ。絶対に、忘れない……あーあ、ふられちゃったんだ、あたし」  お客様は泣きながら、笑いました。 本当の笑みを私達に見せてくれたのです。 甘い涙を思い出して、辛い笑みを忘れたのでした。 ―――― 「……白雪さん。暇ですね」  私がそう言うと、白雪さんは棒付きのチョコレートを咥えて、うん、と頷きました。 白鳥さんは今日も無口です。 けれど本当はとってもお喋りだと知っています。 すると白雪さんは私にも棒付きのチョコレートを一本、くれました。 音符を模ったチョコレートです。 暇だけれど楽しい、という事のようです。  ショコラトリー『白雪』は本日も開店しています。 どんな方でも私達はお待ちしています。  チョコレートで、お喋りしませんか?
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