無口なチョコレート屋さん

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私は赤いコースターをお客様の前に置き、続いて白雪さんはカップをその上に置きました。 「いただきます……あ、あの?」  お客様はレモン入りの白湯に口を付ける前に首を傾げられました。 カウンターの中で私達も椅子に座ったからでしょう。 「ご説明しますね。まずは私達とお喋りしていただきます」 「おしゃべ、り、ですか?」 「そうです。お客様がここに来られた理由。楽しかった思い出。恥ずかしい告白。後悔からの懺悔。お客様がお話されたい事で構いません」  お客様が戸惑ってしまうのは無理もありません。 ですがショコラトリー『白雪』はいつもこうして接客させていただいているのです。 「お喋りの後、隣にいるマスターがお客様に合うチョコレートをご用意致します」
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