無口なチョコレート屋さん

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 お客様は俯きました。 「……チョコレート、好きですか?」 「え、ええ、好きよ。甘い物の中でも、一番好き」 「あはっ、私もです! だから働いてるんですけれどね」  私がそう言うとお客様は、くすっ、と笑ってくれました。 けれどそれは一瞬でした。 「……ここに来たのは失恋したからなの。付き合ってた彼に、ふられちゃった」  へらっ、とお客様は眉を下げて笑います。 私は、じっ、とお客様を見ていました。 「頑張ったんだけど……頑張り、足りなかったみたい」 「何を頑張ったんですか?」  私の質問は直球過ぎたみたいで、お客様の目が丸くなってしまっています。 「……我慢、かな。太らないように甘い物我慢して、チョコレートもずっと食べてないわ。本当は髪も短い方が好きなのに、ずっと伸ばしてたの。何でも彼の好みに合わせてたわ」
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