無口なチョコレート屋さん

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 今はすっきりよ、とお客様はベリーショートの髪をつまみました。 「それでも彼と一緒にいると楽しくて、嬉しくて。喧嘩した事もあったけど、それでも一緒にいたくて。ずっと一緒にいたいって思ってたの。けど、彼は違った……忘れてくれって、言われちゃった」  お客様は短くなった煙草を灰皿に潰して消しました。 「忘れられないの……ううん、忘れたいの。でも、思い出しちゃう」  ああ、と私は気づきました。 お客様はまだ頑張っているのです。 我慢、しているのです。 「……ふふっ、湿っぽい話をしてごめんなさいね」  私は、いいえ、と首を振り、こう言います。 「貴方のお話、聞かせていただきました」  そして白雪さんがこう言います。 「貴方のチョコレートが見つかりました」
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