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「不思議なことを言うな、俺の昔話を聞いただけでそこまで妄想できるとは、大した想像力だ。その能力を生かして小説家にでもなればいいんじゃないか」
「いいわね、いずれ皺洲君と私の恋愛物語でも書くとするわ」
「まあどんな話を書こうとお前の勝手だが…せめて現実に忠実に書けよ」
「そうね、今までの会話であなたの性格は大体把握したけれど、仕草や癖までわかったわけじゃないし…そうだ皺洲君、あなた私と付き合いなさい」
「ちょ、ちょっと待て。どうしてそうなった。さっき俺は友人などいらんといったばかりで」
「でも恋人はいらないなんて一言も言っていないでしょ?」
そう言って意地悪そうに笑う莉奈。その頬は少しだけ赤みがかっていた。彼女なりに勇気を振り絞ったのだろう少しだけ肩に力が入っている。
「しかし、何故そうなった。俺とお前は今しがた知り合ったばかりで何の接点もないじゃないか」
突然の出来事に慌てふためく大地。それを眺めながら莉奈は当然であるかのように答えた。
「何故って、当然一目惚れに決まっているじゃない。あなたの事を何も知らないのに好きになるには、一目惚れ以外ないと思うんだけれど?」
「それはそうだが・・・」
「何その不満そうな顔は、私じゃ不満なのかしら??あなたは強いつながりを求めている。私はあなたが欲しい。それに私たちは似た者同士。ここまで条件が揃っていて付き合わないというの??」
「いや、お前じゃ不満だとかそういうのはないんだが、しかし巫月よ、お前が俺を好きだったとしても、俺がお前を好でなければ交際する意味がないんじゃ…」
「それなら安心して」
待ってましたと言わんばかりに大地の言葉を遮る莉奈。そして自信満々に目を輝かせ言い放つ。
「あなたは私を好きになる」
自信満々に言い放たれたその言葉は少しの不安も感じさせない、凛としたものだった。
「ほう、そこまで言うなら逆に楽しみだな。いいだろう。お前に俺が落とせるか!!!」
自信満々な莉奈に対抗心を抱いたのか、腕を組みのけぞる大地。
「それじゃあひとまず」
そう言って莉奈は立ち上がりスカートのポケットからケータイを取り出して言った。初めての言葉を、今まで自分から言うことはないと思っていてそのセリフ。いざ言うとなると少し恥ずかしくなる一言を。
「ケー番を交換しましょう」
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