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「莉奈よ。こんな情けない男で悪いな。色々迷惑もかけたと思うし、今だってお前に心配ばかりかけてる。しかし、本当に俺はお前がいないとダメになってしまったようだ…俺もお前を忘れないし毎日メールも電話もかかってこい…大好きだよ、莉奈」
初めての言葉、初めて発する言葉。今までに感じたことのない感情と向き合いながら決意する。
「沈黙はどうしたのよ…」
「さっきの風に吹かれていったさ」
「…ばか、私だってあなたに負けないくらい大好きよ…」
涙は少しづつ乾き、莉奈にも微笑む余裕が出来たのか、少しニヤつきながら言う。大地のおかげで落ち着いた、今度は思いっきりの笑顔で大地を安心させてあげよう。そう思い顔を上げて満面の笑みを浮かべたその瞬間。
大地の唇が莉奈のそれと重なった。瞬間、頬が再び暑くなるのを感じる。数秒間その状態は続き、息が苦しくなった頃、大地はゆっくりと莉奈から距離を取り、二人は顔を見合わせた。
「告白は莉奈に取られたからな、こういう事くらい男からするものだろう?」
「本当に…ばかなんだから…」
「ばかで悪かったな。もう少しこうしていたいんだが、そろそろ時間だ…」
そう言って莉奈を抱いていた手を離し。さらに距離を取る。このまま大地がどこかへ行ってしまう気がしたがそんな不安をかき消すように大地は言った。
「大丈夫。どれだけ離れたところにいようと、俺たちは同じ空の下で生きている」
「なにそれ、クサイ」
こうして二人の出会いの物語は幕を閉じる。ハッピーエンドというありふれた結果で。この先二人がどうなったのか、どんな試練を乗り越えどのように幸せになっていくのかは、また別の物語だ。
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雲ひとつない青空に鳥が一羽、気持ちよさそうに飛んでいる。まるで絵画のように美しい空をぼーっと眺めながら、莉奈は現実逃避をしていた。教壇の上では国語の教師がややこしい漢文の説明をしている。そんな話には全く興味がないといった様子で莉奈は空を眺めていた。
同じ空の下にいる彼の事を思いながら…
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