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莉奈は戸惑いながら今日初めて出す声を振り絞る。すると声の主は莉奈の隣に座り、空を眺め始めた。問いに対する答えはない。しかし隣に座ったおかげで、悲しそうに空を眺めるその横顔がはっきり見えた。
「しわす・・・君?何故ここにいるの、授業はどうしたの」
「・・・」
返答はない。
先ほどの声は幻聴だったのだろうか…
しばらくの間、沈黙がふたりを包む。莉奈が沈黙に耐え切れず何か喋ろうとしたそのとき、大地がおもむろに口を開いた。
「なあ巫月、お前にとって友人ってどういう意味だと思う」
「え!?」
唐突で意味深な質問に一瞬固まる莉奈。
しかし一旦冷静になって考える。友人の意味を…
「友人…ね。私にとっての友人…そうね、友達と言ったってただの他人だわ。仲が良いとか悪いとかそんなことは関係ない、上辺だけで付き合うだけのタダの他人ね。私にはそう見えるわ」
「なかなか辛辣だな…」
「で、そんな事を言うあなたにとって友人ってどういう意味だと思っているの?」
聞いたんだから答えなさいよと、大地の方を向く。すると大地の姿が視界に入らなかった。
と言っても、その場から去ったわけではなく、ただその場に寝転んでいるだけだった。その目は閉じられていて、余りにも自由すぎやしないかと不安にもなる光景だったが、しかしそんな不安はよそに大地はまた、唐突に口を開いた。
「俺もそう思うよ。トモダチという皮を被っただけのただの他人だ。仲の良いふりをして本当の意味で仲良くない。ぬるすぎて気持ちが悪い」
「ひねくれてるわね」
「お前ほどではないさ」
「しかし不思議ね、普通に学校生活を送っていれば、そんなひねくれた思想にはいたらないと思うのだけれど。幼い頃に何かあったの?私でよければ話だけでも聞くわよ?」
「はっはー…なんだろうな、巫月、お前を見ているとなぜか無駄に話がしたくなる…いいだろう、とてもありふれたなんの面白みのない普通で平凡で平坦なつまらない俺の昔話でよければお聞かせしよう」
そう言うと大地は上半身を起こし、再び悲しそうな目で空を眺めて口を開くのだった。 さっきまで晴天だった空は徐々に雲が出始めていた。
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