アリアと上司

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「はぁ……はぁ……」 時刻は日が沈み、一般的には夜と言われる時間。 普通ならもう訓練の時間も終え、休む人は休み、訓練を続ける人は自主練や相手を見付けて一緒に訓練したりと、所謂自由時間という時間。 騎士の朝は早いので、この時間夕御飯を過ぎるとだいたいの人が自分の時間に費やし、この時間に訓練をしている人は、大抵が"今日の自分に納得のいかなかった人"のみだ。 そこに私は、ほぼ毎日残って訓練していた。 この『三星』に入ってから、いや、『騎士』になってから、自分の実力に納得したことなんて、一度もなかった。 できるはず、なかった。 「『重くなれ』」 私だけの魔法である、『重力』を使う。イメージしやすいため、言葉に出して。 対象は目の前にある人の形をした的。 『重力』を使ったことにより、若干揺れる。 問題はここからだ。 少しずつ、この魔法を維持する事に対して、意識を薄めていく。 少しずつ。少しずつ。他のことを考えるように。 そして、別の魔法を━━ 「あっ……」 と、そこで『重力』の魔法が消える。 ため息を一つ。また、ここまでしか出来ない。何日やっても。何ヵ月やっても、何年やっても。 私は、ここでずっと立ち止まっていた。 まずは、お父様に憧れた。 強かった。本当に強かった。いや、過去話みたいな言い方になっているが、今でも馬鹿みたいに強いけど、私の知っている昔のお父様は、そこから更に強かった。 まずは、お父様の真似をした。 案外簡単に出来た。 お父様に「スゴいなぁ。アリアは才能あるぞ!」と褒められた。 嬉しかった。 だから、もっと練習した。 だからこそ分かった。お父様の強さが。 次に、お父様の弟子であるルフィリアさんに憧れた。 お父様が怪我をして引退することになり、それから知ったお父様の弟子であるルフィリアさんは、お父様に似たような、でもまた違った強さがあった。 憧れた。 憧れて、また上を知った。 だから、もっともっと訓練した。 そのうち、私に『重力』があるのに気付き、そして私は国王直々の推薦で、12才で『騎士』になれた。
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