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「私、子供の頃からネギ苦手なんです」
「へぇ、損してるな人生」
「大袈裟過ぎませんか?」
「食ってみる?意外と食えるかもよ」
そう言って彼は本当に自然な仕草で、海老天そばを私に近付けて、自分が使っていた箸をそのまま私に渡そうとしてくれた。
「い、いりません!食べませんから!」
「……あ、そ」
危うく間接キスするところだった。
まだ、話し始めて数分しか経っていないのに。
でも彼は、別に何も気にする様子はなく、蕎麦を食べ続けている。
そうだよね。
普通、大人なら間接キスごときで動揺したりしないよね。
でも、せっかくの間接キスのチャンスだったのに。
惜しいことしたかもしれない。
「……月見うどん、少し食べます?」
「いらない。俺、うどんもそんな好きじゃないし」
「もしや、うどんより蕎麦派の人ですか?」
「当然。だから蕎麦食ってんじゃん」
……何か、ことごとく合わなすぎて落ち込む。
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