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「何で落ち込んでんの?」
「……落ち込みますよ」
別に彼が私の大嫌いなネギを好きだろうと、私の大好きなうどんが嫌いだろうと、彼を好きな想いには何の影響もないんだけど。
ウジウジしながら、ふと彼が食べていた蕎麦を見ると、そろそろ食べ終わりそうな雰囲気を醸し出している事に気付いた。
早すぎる。
私なんてまだ、半分以上も残っているのに。
……まだ、話したい。
「あ、あの!」
「何?」
「名前、何ていうんですか?」
「……君に教える必要ある?」
そう返ってくるとは思わなかった。
でも私だって、せっかくのこのチャンス。
簡単には引き下がれない。
「名前くらい聞いたっていいじゃないですか。一緒にうどんと蕎麦を食べた仲なんだし」
そう言うと、彼は微かにふっと笑った。
「それ、どんな仲だよ」
なんて、突っ込んでくれた。
たったそれだけの事に、私の胸はまたドキドキが止まらなくなる。
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