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楓くんと初めて話したあの日。
家に帰ってからも、興奮し過ぎて眠れなかった。
人を好きになるって、凄い事なんだと思う。
だって、私の人生。
見違える程に、変わったから。
「純!何ボーッとしてんの。ていうか、最近ずっとボンヤリしてない?」
「そう?そんな事ないけど」
「とか言って。また例の楓くんの事、考えてたんでしょ」
小学生の頃からの親友の千尋には、楓くんの事を全部話してある。
楓くんがどんな人なのかとか、どれだけカッコいいのかとか。
でも、楓くんの事は誰にも見せたくない。
好きになられたら困るから。
「で?最近いつ会ったの?」
「……昨日、会えたの」
初めて話をしたあの日から、また私は懲りずに毎日のように病院に立ち寄った。
もちろん毎日顔を合わせる事は出来なかったけれど、それでも二週に一度くらいは偶然を装って楓くんに遭遇出来ていた。
ゆっくり話なんて、してくれないけど。
「あ、楓くんいた!」
水曜日の午後。
学校が終わって、バイトが始まるまでの時間。
食堂とかいろいろ探したけど会えなくて、今日は会えないのか、と思っていたら。
中庭のベンチに座っている、彼を見つけた。
「……また、来た」
「えへへ。楓くん、水曜日率高いよね。私も水曜日バイトだから、この辺来るんだ」
「バイト?何の?」
珍しく、楓くんからの質問。
単純な私はそんな事で嬉しくなって、張り切って答えてしまう。
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