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「お前は?」
「え?」
「将来の夢とか、あんの?」
小学生の頃卒業文集に書いた夢は、アナウンサーになる事だった。
中学生の頃もその夢は変わらなくて、いつかテレビ局の局アナになって、テレビに出たいなんて思っていた。
だけど、高校二年になった今。
そんな夢は、捨ててしまった。
「……夢は、捨てたの」
「捨てた?」
「叶わないから。……絶対に」
ベンチに浅く腰掛けながら、私がそう言い切ると、楓くんは一瞬フッと鼻で笑った。
「随分冷めた高校生だな。今の高校生って、みんなそうなの?」
「他の人なんて、知らない。……でも私は、捨てたの」
迷わずそう言い捨てると、流れる沈黙。
そしてその沈黙を破るように、楓くんが口を開いた。
「何かお前って、変わってんな」
「どの辺が?」
「明るくて懐いてくるくせに、妙に冷めてるとこ」
……昔の私は、こんな冷めた事言わなかった。
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