好きな人の、好きな人

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少しずつ近付いていたような距離が、一気に離れてしまった気がした。 「バイト、そろそろ時間じゃないの?」 「え……」 そう言われて時計を見ると、あっという間に時間が経っていて、今病院を出ないと間に合わないくらいの時間になっていた。   「バイト、遅刻したらマズイだろ。そろそろ行けよ」 「……」 でも、まだ答えを聞けていない。 そのとき、楓くんの携帯がピリリ……と中庭の空間に短く鳴り響いた。 鳴ってる、と思った瞬間に楓くんはメールを開いていた。 メールを開いた瞬間、楓くんの少し怖そうな顔が一瞬で緩む。 私の前では、彼はこんな顔を見せない。 楓くんに彼女がいる事は、わかっていた。 初めて楓くんと廊下ですれ違った日から二週間後の日、彼が綺麗な女性と一緒に病院のロビーにいるところを偶然見てしまったんだ。
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