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そして彼は、振り向いた私に何か小さなものを投げてきて、私は慌てて彼が投げたものをキャッチした。
……サイダー味の、キャンディー。
「夏目にやるよ。それ、旨いから。バイト、頑張って」
「……ありがとう」
中庭を出て、私の手の中にあるサイダー味のキャンディーを見つめる。
たかが飴玉一つで、何泣きそうになってるんだ私。
彼は、凄い。
たった一つの飴で、私をこんなにも喜ばせる。
叶わない恋なのはわかっているけれど。
多分きっと、ずっと好き。
会う度好きが増していくから、もう会わなければいいんだろうけど。
今の私のたった一つの楽しみが、水曜日の放課後ここで楓くんに会うことだから。
今その楽しみが無くなってしまう事を想像しただけで、怖くなる。
私は楓くんがくれたキャンディーをバッグの中に毎日入れているポーチの中に入れた。
……食べるの、勿体ないもん。
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