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「あんまり走るなよ。危ないから」
「……大丈夫。ありがと」
蓮は、私の気持ちをわかってくれている。
私がどれだけ楓くんに夢中になっているか、誰よりもわかってくれている。
そして、楓くんに会える事が、今の私にとって唯一の幸せだという事も。
この日もギリギリいつも乗るバスに間に合い、三十分くらいバスに揺られて、やっとバスが病院の前に着いた瞬間一目散に病院の中庭へと急いだ。
「……いない……」
だけどこの日、楓くんは中庭にいなかった。
最近は、私が着くとだいたい楓くんの方が先にベンチに座ってコーヒーを飲んだりしていたのに。
……仕事、忙しいのかな。
楓くんがこの病院に来ている理由は、まだわからない。
でも、もしかしたら今日は遅くなっているだけかもと思い、バイトが始まるギリギリまで待ってみた。
中庭のベンチに一人で座り、隣の空いたスペースを見つめる。
……一人だと、やっぱり寂しいよ。
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