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「そ、そんなに笑わなくたって……」
「悪い。変な女だなと思って」
変な女。
ショックだ。
でも、笑っている彼の顔を見て私は更に彼に惹かれてしまった。
口角がキュッと上がって、普段少しだけ怖そうな鋭い瞳が、ちょっとだけ細くなる。
……笑った顔、格好良すぎる。
つい1ヶ月前まで、隣を通り過ぎただけの人が、今は私の目の前で笑ってくれている。
ドキドキが、加速する。
「はい、出来たよ。海老天そばネギ多めと、月見うどんネギ抜きね」
みっちゃんがトレーに蕎麦とうどんを乗せて持ってきてくれたけれど、わざとなのか何なのか。
みっちゃんは、私の目の前に蕎麦を置いて、彼の目の前にネギ抜きのうどんを置いた。
そして、鼻歌交じりに厨房の中へ戻って行った。
「……すみません。みっちゃん、間違えて置いちゃいましたね」
私は慌ててうどんと蕎麦を交換した。
「それさ。ネギ抜きって、旨いの?」
「え?」
「ネギ入ってないと、絶対旨味半減するだろ」
……そんな事言われても、私はネギ嫌いだから共感できない。
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