第1章 7月1日

12/39
前へ
/256ページ
次へ
「うん、そうであっても不思議はないね。寒蝉神社へ行くためには、今歩いているこの道か、あるいは反対側へと伸びる道か、どちらかを通るしかないんだ。そして、佐那ちゃんの倒れていた位置から考えると、佐那ちゃんはこちら側を通ったことはほぼ間違いないと思うからね。こちらの道を通るっていうことは、途中に分かれ道もないから、きっとそこにある「恋架(こいか)け橋(ばし)」も通ったに違いないよ。だから、見覚えがあってもおかしくないはず。ここから先も、できれば景色に注意していてくれるかな? 見覚えがあるかどうかということ、それが大事な手がかりになってくるかもしれないからね」 「はい、わかりました」  あの橋、恋架け橋っていうんだ。  何だかロマンチックな名前だなぁ。  ズキッ。  また頭が痛む。  なんだろう……。  私はこの橋を確実に知っているはず……それなのにはっきり思い出せないもどかしさ。  不意に右手に持っている絵馬が気になった。  七月七日。  頭はズキズキするのに、大事なことは少しも思い出せない。  記憶を探ろうとするけど、頭の中は濃い霧が立ち込めているような状態だ。  そして理由は分からないけど…………何だか………怖い。  七月七日という日付を見ていると、どうしようもなく不安な気分になった。  この日付に何かあるのかな?  七夕の日付に、不吉な連想など似つかわしくないのに。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加