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「佐那さんさえよろしければ、うちの家に来てもらうこともできます」
お巡りさんに向かって孝宏君が言ってくれた言葉に、私は耳を疑った。
「え? そんな……。突然、押しかけてしまって、本当に大丈夫なんですか?」
「佐那ちゃんさえよければ、ね。ウチはわけあって、ばあちゃんと僕の二人暮らしなんだけど、家には空き部屋も多いから、問題ないと思うよ。ばあちゃんは気さくな人柄だから、事情を知れば、きっと快諾してくれるはず。でも、佐那ちゃんもすぐには決められないだろうから、ひとまず、うちの様子だけでも見に来るかな? それで気に入ってもらえたなら、ばあちゃんの了解をとるのは難しくないと思うから。どうかな?」
「ご迷惑をかけることになっちゃうんじゃ?」
「気にしなくても大丈夫だよ。佐那ちゃんが来てもいいと思うのなら、ばあちゃんはきっと二つ返事で賛成してくれるから」
「それなら……お願いしてもいいですか?」
本当にありがたい申し出だった。
孝宏君や孝宏君のおばあさんにご迷惑がかからないかどうか、それだけが心配だけど。
「そういうことで、いったん、うちに帰りますね。もし、佐那さんがうちをお気に召さなかったときは、警察署のほうに足を運んでみます。そして、明日、区役所にお連れしますよ」
「ふむ、それがいいようだね。それじゃ、何か伝えたいことがあったら連絡するから、ここに連絡先を書いてくれるかい?」
お巡りさんはそう言うと、孝宏君に紙を差し出す。
孝宏君は綺麗な文字で手早く、そこに住所などを書き込んだ。
その後、お巡りさんと挨拶を交わしてから、私たちは交番を後にした。
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