第1章 7月1日

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 うう……。  目を開けると、驚いたことに、私は屋外で倒れていたみたいだった。  そして、口に広がる嫌な苦味。  どうやら土と落ち葉が口に入っちゃったみたい。  汚いよ……。  どうやら転んで気絶していたようだった。  うわぁ、服が土で汚れちゃってる。  土というよりも泥かな、これ。  私は手でワンピースの泥を払った。  それにしても、ここ、どこだろ。  ……………。  っていうか……。  私、誰?!  何も思い出せない……!  私は誰で、ここはどこなのか……。  落ち着かなきゃいけないと分かっているつもりでも、焦燥と困惑が私を追い詰めていた。  慌てて私は身の回りに手がかりを探すが、これといって何も見当たらない。  腕時計も着けていなかったし、私の持ち物といえば、着ているワンピースと靴だけのうように思えた。  手ぶらで出かけていたのかな。  そして、私の身に何があったんだろう。  私は注意深く、自分の身体を調べたが、特に異常は見当たらず、痛みを感じる箇所もどこにもなかった。  ふと何気なく視線を落としたら、私のいる位置から少ししか離れていないところに何か落ちているのが見えた。  気になって近づく私。  しゃがんで拾い上げてみると、絵馬のようだった。  その絵馬には「7月7日」「来栖野佐那(くるすの さな)」とある。  佐那(さな)って私?  聞き覚えがあるような、ないような……。  駄目だ、分かんない。  でも、ここにあるということは、私の持ち物ってことでいいのかな?  私はとりあえず、その絵馬を持っていくことに決めた。  これが少しでも手がかりになれば……。  しかし、これからどうしよう……。  私は気が重くなり、地面にへたり込んでしまった。
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