第1章 7月1日

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 力なく呆然と、あたりを見回すと、どうやら人気(ひとけ)のない山道っぽい場所だ。  私から向かって右手には、木が鬱蒼と生い茂っていて、遠くまで視界を埋め尽くしている。  そして、そこかしこから、かすかに虫の声が聞こえていた。  また、左手のほうには、川が流れているようで、水の流れる音も聞こえる。  あたりは夕暮れのような色合いに包まれていたけど、少し蒸し暑かった。  夏なのかな?  季節すら、今の私には、はっきりと分からない。  左側、前方に目をやると、神社の鳥居が見えた。  ずいぶん山深い場所にある神社だなぁ。  あ、もしかして!  この絵馬って、あの神社のものなんじゃ?  少しだけ元気を取り戻した私が、立ち上がろうとしたとき、私が向かおうと思ったその鳥居の奥から誰かが歩いてきた。  見ると、私と同い年ぐらいの男子だった。  ルックスはかなりかっこいいんだけど、身体は少しほっそりしてる感じだ。  Tシャツにジーンズという、ラフな出で立ちが、私の目には爽やかに映った。  ん?  ………あれ?  どこかで会ったことがあるかも!  ……うーん、分からない……。  自分の名前すら思い出せない私には、この人のことを思い出すことなど、できるはずもなかった。
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