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力なく呆然と、あたりを見回すと、どうやら人気(ひとけ)のない山道っぽい場所だ。
私から向かって右手には、木が鬱蒼と生い茂っていて、遠くまで視界を埋め尽くしている。
そして、そこかしこから、かすかに虫の声が聞こえていた。
また、左手のほうには、川が流れているようで、水の流れる音も聞こえる。
あたりは夕暮れのような色合いに包まれていたけど、少し蒸し暑かった。
夏なのかな?
季節すら、今の私には、はっきりと分からない。
左側、前方に目をやると、神社の鳥居が見えた。
ずいぶん山深い場所にある神社だなぁ。
あ、もしかして!
この絵馬って、あの神社のものなんじゃ?
少しだけ元気を取り戻した私が、立ち上がろうとしたとき、私が向かおうと思ったその鳥居の奥から誰かが歩いてきた。
見ると、私と同い年ぐらいの男子だった。
ルックスはかなりかっこいいんだけど、身体は少しほっそりしてる感じだ。
Tシャツにジーンズという、ラフな出で立ちが、私の目には爽やかに映った。
ん?
………あれ?
どこかで会ったことがあるかも!
……うーん、分からない……。
自分の名前すら思い出せない私には、この人のことを思い出すことなど、できるはずもなかった。
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