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「随分と早いな。…手抜きか?」
「馬鹿にすんな」
俺の冗談が薄いリアクションでかわされると、ミナが覗き込むようにしてアクセサリーを眺めていた。
「あ、これ可愛い!」
そう言ってミナが手に取ったのは、ピンク色をした指輪。
よく見ると細かな細工がされており、ゴルドの技術の高さが伺える。
「早速付けてみるといい」
「はい!」
ミナが指輪をはめると、封魔石から光が放たれ、指輪は白く輝いた。
「これでどのくらい魔力が落ちたんですか?」
「そうだな…お嬢さんならBランクくらいだろ」
「Bかー。落ち過ぎじゃないですか?」
ミナが不満げに頬を膨らますが、ゴルドは気にしていない様子で俺に手を差し出す。
「次はお前だ。早く付けろ」
急かすように前後に揺らす手には、赤い十字架のネックレスと黒い腕輪が光る。
「なっ!?俺は2つかよ?」
「お前の魔力はハッキリ言って底無しだ。だから魔力と無の力をこれで別々に抑える」
無の力とは俺の属性…というか俺には属性というものが無い。
本来人間は、それぞれ潜在的な属性を持っている。
火の属性持ちは、火を扱う魔法の威力が高くなるが、自分の所持属性とは相反する属性、つまり水の魔法が使えない。
だが、ごく稀に属性を2つ持っていたり、俺のように属性を持たない人間もいたりする。
ちなみにミナは前者、光と闇の対極属性持ちだ。
俺の無属性は極めて珍しいんだが、ミナの対極属性もかなり珍しい部類に入る。
俺の場合、扱えない魔法は無いんだが、突出した属性魔法が無い為、ミナに光と闇の魔法では劣る。
…まあこの話はそのうち詳しく話す事にしよう。
「仕方ないか。じゃあ早速…」
そう言って俺はアクセサリーを手に取ると、首と腕に付けた。
ミナの時と同じように宝石が光り、白い輝きを放つ。
力が抜けるような、心地悪い脱力感が全身を巡り、それが収まると宝石の輝きも消えていた。
「これでどれくらい落ちたんだ?」
「Aランク…ってところだろ」
「上等だ。ありがとな、また来るわ」
「ありがとうございました。ゴルドさん」
俺が店を出ようとすると、ミナはゴルドに一礼して後に続く。
「また来いよ」
「ああ、またな」
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