second X'mas

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怒らせた、と分かっても、謝りたくはなかった。 『店長』は彼の肩書きであって、別に彼女の……由紀ちゃんの専売特許ではない。 彼は由紀ちゃんのものじゃないし、なんなら由紀ちゃんだって彼以外の別の男のものだ。 それをいつまでもウジウジと、たかだか呼び方ひとつで。 むしろ、こっちが腹立つわ。 「とにかく出ようよ、『鍵本さん』。もうダラダラ長居だけして何にも頼んでないし、寝潰れてたんじゃお店にも迷惑」 店を出たら適当に撒いて、1人で終電で帰ろう。 謝りこそしないけれど呼び方を変えてやったのは、これでもかなり大盤振る舞いの譲歩だった。 酔っ払い相手にマジで言い合ったって意味がない。 なのにこの男は、 「それも駄目」 と一蹴する。 大方、いつもの通り店の外でも『店長』と呼んでくる由紀ちゃんに、無理やり『鍵本』で呼ばせたのだろう。 そうピンと来たら、尚更腹が立った。 おもむろに立ち上がった男はカウンターへと向かい、店主に声をかけて会計を始めた。 腐ってもフラれても酔っ払っても年上の男の体面なのか、一応は本当に奢ってくれるつもりらしい。 悔しいから自分の分は払う、なんて無駄なことは、私はしない。
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