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――シャワーの音で目が覚めた。
ひと目で分かる、ホテルの一室。
ベッドではなく、2人掛けのソファに寝かされていたらしい。
ベッドはふたつあった。
ラブホテル、ではないところが、少しだけ気分を良くする。
当然あの男がここへ運んできたのだろう。
男が私を担いできたのか、それとも私は自力で歩いていたのかすらも分からない。
彼も相当酔っていたはずだから一旦は力尽きたのだろうか、ベッドの片方には、シーツの上にそのまま人が倒れ込んで休んだような形跡が残っていた。
部屋はそこそこ広かった。
少なくともビジネスホテルの最安値の一室ではないように見える。
ホテルの名前や場所が分かるものを探そうとしかけて、辞めた。
既にここにいるのだ、無意味だ。
テーブルの上には空になった水のペットボトルが1本、さらに半分飲みかけのお茶のペットボトル。
その横に未開封の水とお茶が1本ずつ。
起きたら飲めという意味だろうか、知らないがそこにあるのだから、勝手に手を伸ばす。
灰皿には吸い殻が3本、内1本はやたら長いまんまだ。
転がっている煙草のパッケージは誰かと同じのような気がした。
抱かれたことのある男ではない、匂いが違った。
無性に吸いたくなって、1本くすねた。
久しぶりに吸い込むソレは馴染みのあるメンソールではなくて、少しだけむせた。
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