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「何そのカッコ、誘ってる?」
バスルームから出た私を見るなり、その気もないクセにそう言ってきた男に全力で睨みを利かせる。
「うるさいよ、由紀ちゃん以外に勃たないインポ野郎が。いっぺん死んで来い」
「勃つって。試してみるか」
「三回死んでから出直してきな」
軽口を叩いたら清々した。
「仮にも女なんだから言葉は選べよ」と、言いながら男も楽しそうに笑っている。
割り切ってさえしまえば、この気兼ねのなさは楽で居心地が良いと言えなくもなかった。
「ケツが見えるぞ」
脱いだ服をクローゼットのハンガーにかけていると、後ろからまた茶々を入れてくる。
「見たけりゃ見れば。パンツ履いてるもん」
言い返すとそれがツボに入ったのか、大袈裟な笑い声をあげる。
「意外と細いんだな。あれだけ滑れるから、がちがちの筋肉質かと思ったけど」
「そうよ魅惑の太腿ちらりよ。あなたがインポ野郎で本当に残念ね」
灰皿の煙草が短い間に3本増えていた。
空き缶も並んでいる。
ヤケ酒、ヤケ煙草。
救いようのない失恋インポ野郎相手に、なのに何でか気分良く笑っているのはきっとまだお酒が抜けきっていないからだ。
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