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手首を掴まれた。
くわえたままの煙草のせいで、抗議の言葉がすぐには出てこない。
そのまま固まっていると、もう片方の手にバスローブの襟元を掴まれ引っ張られる。
下手に抵抗したら脱げる、と、条件反射的にされるがままに引き寄せられ。
顔が近付いて、ようやく意味が分かった。
差し出されたのは煙草の火。
その先端にくわえたままの煙草を押し付けて吸い込むと、火種がこちら側に渡ってきた。
そのままの至近距離で男の顔面に向けて思いきり煙を吐き出し、
「危ないじゃない、一歩間違ったら乙女の顔面に根性焼き入るところよ」
うっかり、少しだけドキッとしたことを悟られないように冷たく言い捨てる。
「いつまで掴んで――」
「せっかくサービスしてくれてるから胸くらい拝んでやろうかと思ったのに、ブラジャーしてやがった」
乱れたバスローブの胸元を覗きこみながらしれっとそう言った男の額に、遠慮なく平手を放った。
「ふざけないでよ、どうせその気もないクセ……に……」
言葉が尻すぼみになったのは、気が付いてしまったから。
僅かだけど反応を示している男の身体に。
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