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雰囲気なんて欠片もなかった。
私は煙草をふかしたまんま。
男は他の女に未練たらたらで、品の無い言葉でお互いを罵りあって。
なのに触れている部分だけがやたらと熱を持って、このまま流されたいと思っている自分がいる。
「慰めてやろうか?」
「冗談……欲求不満で慰めが必要なのはそっちでしょ」
同情のセックスほど虚しいものはない。
あり得るとしたら、私が『してやる』ほうだ。
後ろからお腹に回された手が温かかった。
肩口にかかる吐息には熱がこもっているように感じる。
頬を撫でた手がそのまま口元の煙草をさらって、灰皿に戻された。
――『空気』が出来た。
だけど、お尻に当たる彼のモノがそれ以上反応する気配はなかった。
「欲求不満は否めないな、昨日寸止め食らったし」
「……はッ? したんじゃないの?」
「押し倒しはしたけど。――怖気づいて、逃げた」
その複雑な心境は、私にはとても想像しがたかった。
好きな子を押し倒して、相手は抵抗もしなくて。
それでも、多分彼女が他の男を想ってることが分かっているから……。
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