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彼は、驚いたような困ったような、中途半端な苦笑いを貼り付けたまま固まった。
気まずさを紛らわすために「何その顔」と言って笑ったけど、わざとらしかったかもしれない。
しばらく無言でじっと見られたのは、真意を探られていたのかも。
やがてふっと力が抜けたように息を吐き出すと、ようやく再び彼に、意地の悪そうな笑いが戻った。
「寝る時くらい、脱ぐつもりだったんだけど」
試すつもりなのか。
上からにやりと細めた目で見下ろしてくる男が、履いていたパンツの腰のあたりを引っ張りながらそう言った。
「いんじゃない別に、楽な恰好で寝れば。あ、手伝おうか?」
怯まずに言い返しながらパンツに手をかけようとすると、「馬鹿」と笑われた。
楽しそうに。
だから私は、『言ってはいけないこと』を言ってしまったのだとは思わずに済んだのだ。
脱ぐのは本気らしい。
パンツのファスナーを下ろす音につられて見ると、下着の端が覗いていた。
さすがにジロジロ見ていられなくなって、逃げるようにベッドに潜り込む。
結局どちらのベッドで彼が寝るつもりなのかは明言されてなくて、だけど私は落っこちるくらいにベッドの隅に寄って彼が来てくれるのを待っているのだ。
まるで初体験の相手を待つ処女みたいに。
酷く滑稽だった。
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