second X'mas

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「あんた、さ」 ギシ、とスプリングがしなって、部屋のライトが落ちた。 どきりとする。 恋してる女じゃあるまいし、と思っても、心臓の動きなんて自由意志ではどうにもならない。 毛布の下に少しだけ外気が滑りこんで、彼の気配がすぐ隣に侵入した。 来てくれたんだ、と、その瞬間安堵に包まれたのが不思議だった。 「すっぴんの方が可愛いね」 「……はっ!?」 妙に気恥ずかしくて、彼のために空けたスペースには背を向けていたはずなのに、その恐ろしくタイミングを読まない台詞に思わず身を捻る。 枕に頬杖ついて、半身こちらに開いた男が笑っているのが、暗がりの中でも分かった。 明かりの下で見ていたよりも、ライトが落ちた薄闇で毛布の下に見える裸の上半身の方がやたら色気があるのは、ちょっとした誤算だった。 胸板、鎖骨、喉仏。 どこを見てもどんどん赤面していく気がして目を伏せると、男が笑いを噛み殺した。 「さ、さっきからずっとすっぴんなのに。何で今言うのよ」 「あー、メイクのことじゃなくてね」 ……じゃあ一体、何を言ってるのか。 言葉の合間に、彼の頬杖をついてないほうの腕が少し毛布を持ち上げる。 2人の間に出来たその空間に誘われたようで、顔色窺いながら、恐る恐る距離を少しだけ詰めた。
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