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「寄れよ、もっと」
言葉も、腰に回された腕も、今までと打って変わって強引だった。
反射的に強張った身体に気付いたのか、男はまた「くっ」と小さく笑った。
毛布の下では、足が――パンツを脱いだ彼の素肌と、私の太腿が軽く触れあった。
軽く当たっただけだ。
なのにさっきとは違う、布越しではない感触が生々しすぎてたじろいだ。
覆っていた頼りないバスローブは布団の下で肌蹴ているのかも知れない。
そう思ったら、無性に恥ずかしい。
「……しないから。大丈夫」
言い聞かせるようにそう言って、髪を撫でられた。
『何もしない』なんて、手を出す男の常套句みたいなもんだ。
そんな安い台詞を、言って欲しくなかった。
「なに、が……しないんじゃなくて、出来ないんでしょ」
小馬鹿にして、笑い飛ばそうとした。
だけどホントは、
「もう、出来るけど。――しない」
……足が触れた時に、気付いてた。
今なら彼は、本当に、しようと思えば『出来る』のだと。
「なんで……」
「もっと力抜いてろよ。すっぴんの方が可愛いって言ったろ?」
ほら、と、片腕を、私の首の下に滑り込ませて。
「今日だけな。無理やり付き合わせた礼。ただ甘えさせてやるって言ってんの」
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