second X'mas

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そこそこイイ男だ、背も高い。 ボードも上手かった(ぶっちゃけゲレンデでは群を抜いてカッコ良かった)し、新潟までの運転はソツなくて、これもまた私的にはポイントが高い。 歳上だけあって周りの男と比べても行動力も常識もあるし、職業柄か(一応管理職だ、収入までは知らないが)リーダーシップもある。 はっきり言ってしまえば、惚れる要素はいくらでもあった。 くだんの初滑りイベントで、私の友人(何の偶然か共通の知り合いだった)に彼がベタ惚れだと気付きさえしなければ。 それから、 「言っときますけどね、おっさんは『身体で慰めて』とか下衆なこと言わないから」 「わーさすが年寄り、枯れてる! こんなイイ女目の前にしていきなりソレ言っちゃう!?」 「だから、年寄り扱いすんなって」 ――『私と克之、セフレだったんだけど』 初対面で、あんな下品なセリフを聞かれてなければ。 軽々しく『セフレ』とか口にした私に目を白黒させて、むせて咳き込んで、よっぽど衝撃だったのか『マジで引くわ』と顔を引きつらせて、警戒心剥き出しで彼はにっこり笑った。 『サークル内にセフレは作んないでね』と。 まあそんな彼が無残にも例の彼女に撃沈して、なんの因果か――いや因果応報と言うか、それを半分私のせいってことで逆恨みされている。 クリスマスに呼び出されたのは決して甘い目的なんかではなく、 「……うわ、もうちょっとお洒落な店考えといてよ。クリスマスに赤暖簾って」 「っせえ、十分だ。旨いんだぞここ、小汚ぇけど」 ――フラれたての彼の、ヤケ酒の付き合いだ。
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