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「ばか、じゃ、ないの……フラれた者同士、傷の舐め合いなんかしないわよ」
腕枕が心地良かった。
包み込むように被さって、もう片方の手でずっと髪を撫でてくれているのも。
ふわふわの枕と彼の肩の隙間から息をした。
眩暈がするほどに、良い匂いがした。
顔を見られないくらい近付きすぎた距離が、私を裸にしていく。
彼が言った『すっぴん』の意味が、ようやく理解できた。
「――泣く?」
問いかけに、首を横に振る。
私よりもずっと誠実に、長い間温めていた恋心が散ったばかりの彼も泣いていないのに。
私が今泣いて彼に慰められるのは、違う。
「残念ね……せっかく治ったのに、『しない』でくれるんだ?」
挑発するように、彼の足の間に太腿を滑り込ませた。
試した、わけじゃない。
そうすることでしか散らせない熱がお互い宿ってしまっていることに、気付いているから。
瞬間少しだけ男の腕に力が入って、まるで抱きしめられたみたいだった。
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