second X'mas

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――なかったことにするのには、慣れている。 SNSで彼、鍵本聡史が運営するスノボサークルの掲示板に、次のゲレンデイベントの予定確認板が立つ少し前のことだった。 数日音沙汰なかったクセに、彼のアカウント『Key』から何事もなかったような直コメが入ったのは。 文脈を要約すれば、イベントの日程候補から、事前に私が都合悪い日を除いてくれるつもりのようだった。 管理人らしからぬ、私情を挟んだ個人的な特別扱い。 それは私と『また会いたい』と思ってくれているようにも取れるが、あの日の詫びか何かのつもりかも知れないとも思えて正直微妙だった。 あの夜を匂わせる文字などひとつもなかった。 甘い言葉も、突き放す言葉も、誤魔化しすらも。 ただひとつだけ、 >みどりの予定、先に教えといて。 ――『みどり』と。 その日から確かに、彼は私を名前で呼ぶようになっていた。 「ちゃんと、覚えてんじゃん」 その日は馬鹿みたいに浮かれた。 スマホ画面に表示されるその文字を、何度も指でなぞった。 だけど他をどんなに探しても、彼の気持ちを読み取れる言葉は何もなかった。 都合よく利用したいだけなのなら、あの日私を抱けば良かったのだ。 そうじゃなかった。 だから変な期待をした。 大事にされたのだ、と。 そういう、一晩遊んで捨てる相手としては扱われなかったのだと。 それからすぐに凹んだ。 抱くほどの価値も見いだせない相手だったのかもしれない。 第一彼は失恋したばかりで、まだ次の恋に踏み出す様な気持ちにはなっていないに違いないと。
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