second X'mas

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「なんだ、本当に来たのか」 20時、正確に言えば待ち合わせの23分前。 藤沢駅前、北口地上デッキの喫煙所、灰皿横――あの時と、同じだ。 ターミナル駅だけあって、ロータリーから周辺のショップから、眩しいくらいのイルミネーションに飾られている。 聡史がいつもに増した色香を放っているように見えるのもそのせいだろうか。 少しだけいつもよりも着飾ったことも、おかげで後悔しなくて済むというものだ。 先に着いて待っているつもりだったのに、まさかこんなに早く来ているなんて思いもしなかった。 「メリークリスマス、聡史。……ってか、私が呼び出したんだけど」 「ああ、そうか。イブだしな、騙されてるんじゃないかって疑った」 「何それ、エイプリルフールじゃあるまいし」 自然と先導して歩き出した、彼が向かったのはいつもの赤暖簾ではなかった。 目指している先に見えたのは、正にクリスマスデートおあつらえ向きという小洒落たレストラン。 目的地はどうやらあそこ……『そういう店』も知ってると、そう言えばあの時アピールしていたような気がする。 「……ねえ?」 それだけ言って、斜め前を歩く聡史の顔を覗きこむようにして、少しだけ見上げた。 歩きはじめてから聡史は、不貞腐れたように終始無言だ。 キラキラと光輝いてムードを撒き散らしているレストランにもう到達しようという所なのに、それが不安を煽る。 ――けど。 す、と、黙って差し出された手を、私は握って良いのだと思う。 今日、たった今、この瞬間が。 私たちの『タイミング』だったのだと、信じて良いのだと思う。 「……待ってた、ずっと」 言うと、繋いだ手にぎゅっと力がこめられた。 一晩では解けない魔法――そのために必要な、長い長い準備期間がようやく終わって。 降り始めた小雪と煌めく光の海に祝福されながら、私たちは、新しい扉を開ける。
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