second X'mas

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「生! 大ジョッキ!!」 張り上げた大声は狭い店中に響き渡り、「威勢がいいねお姉ちゃん!」という店主の言葉に笑いが起こった。 確かにイイ店だ、ムードは欠片もないけど。 この店を知ったことを今日の収穫にして、適当に飲んで食べて、この男に奢らせてさっさと帰ろう。 そう思った、矢先のことだった。 「手くらい出したさ、そりゃ」 がつんと音を響かせ、乱暴にジョッキをテーブルに叩きつけた男はそう言い捨てた。 「……は。まさか」 彼女――由紀ちゃんからは、喧嘩別れしていた彼と無事仲直り出来たと報告が来ていた。 他の男に抱かれた直後で? そんなこと出来る子ではない。 「何見栄張っちゃってんの」 「別に見栄じゃねえ。押し倒したし、あいつは抵抗しなかった」 それを聞いて急速に、心が萎えた。 目の前の男に対する興味は失せ、由紀ちゃんに対する見方もがらりと変わっていく。 なんだ、私が見てたのは幻想か。 所詮みんな、同じ穴の貉。 適当に体裁だけ見繕って、裏ではやっすいことしてんだ。 「くだらない。どんだけカタい男かと思ったのに、結局そーなんだぁ」 大袈裟なため息と一緒に言うと、男の片眉がぴくりと上がった。
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