ミライに繋ぐ恋のおと。

積み重なる、ぬくもり。

　俺、北原直紀、１９歳。大学生兼、アマチュアロックバンドのベーシスト。

　東京都内でライブ活動を始めてもうすぐ１年。チケットは完売するくらいまで上り詰めた。熱心なお客に感謝したい。

　そして……。

「石川町駅、到着～っ」

　無邪気で元気なこの彼女。

　名前は望月志保、歳は俺と同じ。製菓の専門学校に通う、パティシエの卵。

　地元は同じものの、学校は違う。だけど縁があって現在、交際中だ。

　付き合って１ヶ月ちょっと。手を繋ぐ以上がまだない関係。

　しかもこれは『付き合っているうちに好きになるかもしれない』という、気持ちが曖昧な状態での交際。

　俺の方は未だに好きかどうかは不透明のまま。

　彼女も何も言ってこない。けれど……。