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「なんじゃ六?朝から我の顔をマジマジと見詰めて……はは~ん。さては、我の美しさを皆に説明しておったな?」
「ハズレだな。先ずはドラ◯もんじゃない事を説明していた所だ」
「あの様な甘党と一緒にするでない!我は油揚げ一筋2000年以上じゃ!」
「牛丼一筋300年を軽く越えたな。と言うか2000年前に油揚げ何て無いだろ?まぁ、しかし本当に狐って油揚げが好きなんだな?」
「こら六!ただの狐じゃない言っておろう!天狐(テンコ)じゃ!妖狐の中では最高位の我じゃぞ!」
天狐のテンコが、妖狐で一番だと熱弁するのを聞いたのは、これで二度目だ。
一回目は俺とテンコが初めて出逢った、忘れもしない一週間前の夜だった。
今でこそ、可愛いらしいテンコだが初めて出逢った、あの一週間前の夜は確かに違った……
◇◇◇
急に甘い物が食べたくなり深夜にコンビニに出掛けた俺が丁度、空き地になっている場所を通り掛かった瞬間に身体に寒気が走った。
不吉な前触れを身体が先に感じ取ったのか歩く足を身体が勝手に止めていた。
(空き地だけは……見てはならない)
頭では、そう思っていても自分の意思とは正反対に目が勝手に何も無い空き地を向いてしまう。
「!?」
やはり見るべきでは無かった。
目を向けた先には深夜の空き地に男が一人こちらを睨み立っているのが見えた。
いや正確には人と言うのは間違いか。何故なら彼の頭からは二本の長い角が生えている。
そして瞳は怪しく真っ赤に染まり鼻息もかなり荒い。
それが、まかり間違えて人間だったとしても最早まともな精神状態じゃない。
そう思った俺は即座に『逃げる』と言う一択しかない選択肢を選び実行に移した……
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